8ddd8aec.JPG8月13日(火)曇り
 早朝4時半、ノシャップ岬を出発する。今日は最も長い距離を走らなければならない。
 体力はまだまだ温存している。それを全部吐き出さないと、今日の最終目的地のオンネトーまでは行き着けないか?
 何れ500km以上の長丁場である。

まず日本最北端の地、宗谷岬を目指す。稚内を過ぎれば、そこはもうオホーツクの海である。やはり霧が出ている。バイクで切る風も、思いのほか冷たい。前方には、切り立った岩肌を岬に迫り出した宗谷丘陵が、霧の切れ間に見え隠れし、左方から聞こえる、渚に打ち寄せる波音だけがオホーツクの存在を鼓舞している。海は濃霧で何も見えない。
 この時期の北海道の早朝の海は、霧が常のようだ。
 宗谷岬に着いた。北緯45度31分14秒岬の突端に建てられた高さ5.44mの三角錐のモニュメント、日本最北端の地碑の前に立つ。ついにここまで来たか、と感無量である。すでに先客が数名来てモニュメントの階段に座り写真のポーズをとっている。小生も先客ライダーに頼んで「写るんです」のシャッター押しをお願いしフィルムに納まる。
 この天候ではマニュアル操作の一眼レフでないとハッキリとした写真はきっと無理だろう。愛用のカメラを置いてきたことにちょっぴり後悔する。
 それにしても、晴れていれば40km先に樺太(カラフト)を望むことができるこの地に、初めて立った間宮林蔵の探求心と偉業を思う時、樺太を見つめる眼前の立像が、心に重く迫ってくる。立像の足をひと撫でし、その偉業にあやかる。
 ここから紋別までは、ひたすらオホーツクの海を左に見ながら南下する。
 いよいよメインイベント、摩周湖、オンネトーに向かってまっしぐらだ。
 R238は宗谷岬を過ぎたところからは、殆ど直線が果てしなく続く。町から町までは数十kmあるので、そま間は信号もない。左手は海また海、右手は丘陵また丘陵である。
 ライダーにとっては、これが北海道の魅力であり、憧れのひとつなのだ。
 約230km走行し、湧別町に着いた。このまま行けば網走だが、網走に立ち寄る時間はないので、R242を遠軽まで行き、R333を北見、美幌峠経由で屈斜路湖、摩周湖まで行くことにした。
 山また山のR242置戸(オケト)国道、R333遠軽国道を順調に走行、北見を過ぎて、R243から美幌峠に着いた。ここに来るまでは霧もすっかり晴れて、太陽も顔を出していたが、途中の電光標識には「美幌峠霧、走行注意」とあった。本当かな?と思っていたが、ここに着いてやはり霧である。海、峠、湖は霧と思って間違いないようだ。
 この美幌峠は屈斜路湖を見渡す展望台ともなっている。霧のため、その全貌を見ることはできないが、所々の霧ホールから湖の一部がボヤッと見えている。この方がかえって神秘的でいいのかもしれない。
 ここから約40km、屈斜路湖畔を巡る下りのルートとなる。
 屈斜路湖は人で溢れていた。アイヌ古丹、ここはアイヌ民族資料館だが、温泉に入れることで有名である。赤湯、砂湯等、道道278沿いは、湖畔を温泉が取り巻いているので恰好のリゾートエリアとなっている。人ごみの中には入りたくないので、一度もバイクを下りずに硫黄山まで突っ走る。ボコボコと噴煙を上げ、硫黄色に染まった昭和新山ほどの大きさのいわゆる地獄谷である。道路にバイクを停めて、跨ったまま写真を撮る。
 この先はいよいよ摩周湖だ。摩周湖が近づくにつれ、また霧が濃くなってきた。「見えてくれよ」と強く念じる。
 第3展望台に着いた。バイクを停めるなり走って展望台に行く。残念、霧で何も見えない。それも深く濃い霧である。せっかくここまで来たのに徒労に終わるのか?
 駐車場に戻り、第1では見えてるの?とライダーに聞いてみた。5分前に第1から来たが、その時は見えていた、という。急いでバイクを第1展望台に向ける。この摩周湖には3箇所の展望台があり、その内の2つが道道278沿いにある。第2展望台は、清里峠からダートを通って来なければならない難所であるが、最も湖が見られる確立が高いと言われている。第1展望台はレストハウスがある最も大きな展望台で、観光客の数も半端ではない。
 ここでは駐車料金を支払わなければならない。入場するのに時間がかかる。
 やっと手続きを済ませ、展望台に立つ。見えた。霧で靄ってはいるが、カムイッシュ島もちゃんと見えている。感激である。カムイッシュ(神様のような老婆)島は滅多に見えないといわれているのに。
 光の加減で湖面が秒単位で変化して行くのが認識できる。素晴らしいの一言である。
 緑と青の濃淡の変化である。この湖に注ぐ川は一つもなく、湧水が源である。色の変化は、水の清らかさと光が織り成すファンタジーに他ならない。人を寄せつけない45度の急斜が、神秘的なこの湖を一層引き立たせている。
 満足した時間を過ごした後、阿寒横断道路R241を道東の秘湖、オンネトーを目指して進む。約40km走行して阿寒湖を通過。現在17時である。日暮れまでに、夕暮れ時のオンネトーを見ておきたいので、阿寒湖畔には向かわず通過した。
 阿寒湖から約25kmで今日の宿泊先の野中温泉ユースホステルに着いた。オンネトーから2kmほどのところにあるユースである。チェックインを済ませ、荷物を部屋に置いて、オンネトーまで一走り。18時近いというのに、ひっきりなしに観光客がやって来る。
 道が狭いので自動車は大変であるが、小生はバイクなのでスイスイと泳ぎながら、秘湖に着いた。
 きれいだ!第1印象はその一言である。湖と言うにはあまりにも小さく、湖面は風のために波だっているが、その色は小生には薄黄緑に見える。今までたくさんの湖を見てきたが、このような湖面の色を見たのは、初めてである。
 また、雌阿寒岳と阿寒富士が湖を抱くようにその雄姿を見せ、自然の造形の素晴らしさを再認識するに相応しい風景である。
 西に傾いた太陽光が、斜め前方から湖と阿寒富士に注いでいる。
 この時間だけにしか見ることのできない湖面の色なのかもしれない。
 逆さ阿寒富士は、山の後ろから昇る朝日が湖面に写してくれるだろう。
 明日の早朝にまた来よう。
 北海道での宿泊は今晩が最後である。本日の走行距離520km、よく走ったものである。雌阿寒岳温泉にゆっくり浸かり、疲れた体を癒しつつ、北海道最後の夜をしみじみ味わう。