775f7846.JPG8月12日(月)曇り
 3日目の朝が来た。今日は日本最北端の地を目指して稚内まで行く予定である。
 500km以上走行しなければならない。気を引き締めてガッツで行こう。
 5時にユースホステルを後にし、道央自動車道に入る。旭川までは高速道利用とすることにした。
 道央自動車道は初日にも利用したが、今回もガラガラに空いている。これで採算が取れるのか?と余計な心配をしてしまう。それだけ一般道を利用する人が多いのだが、それも頷ける。後で分かったことだが、街中を除けば一般道でも70km/hから80km/hで車が流れている。北海道ではバイクも自動車も目的地に着く時間が変わらない。

何故か?郊外に出てしまえば、山また山、海また海、牧場また牧場、これらの何れかのパターンなのだ。信号も殆どない。歩行者がいる可能性は極めて少ない。本州では考えられないことである。
 と言う訳で、高速道は必要なく、いつも空いているのである。
 そんな高速道をGPZ1100は、優雅に余裕をもって疾走する。市販されているオートモービルの中で、最も速く走ることが出来るのはバイクである。無理なく300km/hを実現することができる。そのエンジンを積んでいるのが我が鉄馬であるが、国内の自主規制でエンジンの回転数に合わせて、燃料をカットするように出来ているので心配には及ばない。
 道央自動車道の終点、旭川で高速道を出てR40、通称「名寄(ナヨロ)国道」を宗谷本線沿いに、美深(ビフカ)目指して突っ走る。この辺りは特に見るべきものはないので、所々に小さな町が点在する、のどかな山間の道をただただひた走る。
 約100km走行して、美深に着いた。ここから進路を変え、R275「美深国道」とR239「観月国道」を乗り継いで、日本海の苫前まで向かう。そこから先は海また海の一本道、稚内まで続く「天売(テウリ)国道」となる。
 R275はライダーにとっては堪らない「ワインディングロード」が続く。左右にバイクをバンクさせる間隔が秒単位の目まぐるしいカーブの連続である。いわゆる「サイコー」で気分がいいのである。
 54kmほど走り、美深峠を越えたところに、ダム建設でできた人造湖の「朱鞠内湖」がある。展望台で全景を眺めた後に、湖畔まで下りてみた。あちこちにテントが張ってある。家族連れや若者のグループなど、さまざまな人々がそれぞれの夏を謳歌している。微笑ましいかぎりである。キャンプ場の管理者に聞いてみると、メジャーな観光地ではないので、地元の人が多いそうである。
 朱鞠内湖を後にし、ここからR239に進路を取り、苫前を目指す。
 しこたまワインディングを楽しんで、美深から約150km走行して、苫前に出た。
 目の前は北海道から見る、初めての日本海である。天気は薄曇り、たまに太陽も顔を出し、そう暑くもない、いい陽気である。
 稚内を目指して、左手に海を見ながらの渚走行が始まった。
 羽幌まで来た。天売島と焼尻(ヤギシリ)島が兄弟島のように肩を並べて浮かんでいるのが綺麗に見えている。今日の日本海は穏やかに凪いでいる。このまま風になり海を渡って行くような錯覚に陥る。自然との一体感が素晴らしいバイクならではの感覚である。
 行けども行けども、海また海である。これがライダー天国北海道なのだ。
 天塩(テシオ)を過ぎ道道909を、いよいよサロベツ原野に入って行く。海の中には、青みを帯びた「利尻富士」が雄大に聳え、サロベツはハクサンチドリの紅とエゾスカシユリの黄を際立たせ、幻想的な風景が旅情をかき立てる。
 自然の素晴らしさの前では、人造物の全てが陳腐に思えてしまう。
 このサロベツ原野は天塩から約50kmも続くのだ。ただただ素晴らしいの一言である。
 札幌から510km走行して、15時にノシャップ岬に着いた。所要時間約8時間の強行軍であった。
 今晩の宿はライダーハウスに決めている。ライダーハウスとは、北海道にだけあるライダーのための簡易宿泊所で、大変安く宿泊ができる。宿泊無料というところも結構あるが、大概は寝具はなく、寝袋を持参しなければならない。今晩のライダーハウスは、貸し布団を使って2000円である。四畳半の個室を使うことができた。
 2000円では安すぎる大変ありがたい北海道での2泊目となった。
 夕食は、3500円のウニ丼にした。2000円で宿泊をして3500円の食事では、割に合わないか?それよりも笑いの種になりそうだ。
 夜半から雨になった。降るなら今晩だけにしてほしい。明日はいよいよ楽しみにしている摩周湖が見られる。晴れることを祈るばかりだ。