f821d067.jpg8月11日(日)小雨のち曇り
 早朝4時半、定刻どおり室蘭港着。夜中の2時頃目覚めて、それから眠っていない。全身マッサージも、1時間もすれば苦痛に変わる。無償に布団が恋しい7時間であった。
 いよいよ北海道に上陸だ。男は幾つになっても少年である。心が踊る。
 我が鉄馬に鞭をひとつくれて、颯爽と上陸したが、出端を挫かれた。10メーター先も見えない霧雨の降る濃霧である。寒い、とりあえずターミナルビルに逃げ込む。体感温度は10度以下に感じる。
 真夏の8月11日である。本州では考えられないことだ。

この状態では、ボケッとただ外を眺めているしかない。残念。
 しばらく、ターミナルビルのロビーのソファーに横になることにした。フェリーでは、夜通しうつらうつらしていたので、丁度いい。2、3時間寝て様子をみよう。
 しばらく寝て目覚めたのが7時である。2度間ほど眠ることができた。
 依然として外は濃霧である。
 泣けるという「地球岬」に行っても、きっと何も見えないだろう。残念だが仕方がない。
 もしやと思い持ってきたセーターを着て、ブーツカバーに防水ズボン、いつも身につけているオールウェザージャケット、雨に対する装備は完璧である。
 とりあえず札幌まで行ってみることにした。
 登別室蘭インターから道央自動車道に入り札幌を目指す。
 苫小牧までは太平洋沿いを通る高速道なので、霧はいっこうに晴れない。距離が進むにつれて、ジワッと雨具が濡れてくる。おまけに寒い。仙台での4月位の気温に思えてしまう。
 約40分、50km走行後、樽前SAで休憩する。8時を少々過ぎたところである。朝食には丁度いい時間だ。
 天気が良ければ、この辺りから樽前山が綺麗に見えるはずだが、霧また霧の霧隠れである。今日1日こんな調子だと思うと憂鬱になる。「憧れの北の大地はどこにある」と叫びたい心境になった。
 ホットドックとホットコーヒーで人心地がついたところで、再び走り出す。
 8時半を過ぎているのに、高速道はガラガラである。我が鉄馬の独走が続く。
 苫小牧西、東を過ぎ、千歳、恵庭、北広島と進んで来た。次が札幌南インターである。
 ここまで来て、やっと霧が晴れ、雲が薄くなってきた。すでに110km走っている。
 雨が止まなければ、札幌見物をして一日過ごそうかと思ったが、霧も雨も何とか大丈夫のようである。
 R230定山渓経由で洞爺湖まで行き、昭和新山、支笏湖を回るコースに切り換えることにした。
 室蘭を動かずに、天気の回復を待ったほうが良かったか?ちょっぴり後悔したが仕方がない。札幌までの走りを楽しんだと思えばいいではないか。
 札幌南インターを出て、すすきの交差点からR230に入った。右手は円山公園、大倉山、宮の森シャンツェなど、札幌五輪関係の施設が多い所だ。左手は羊ヶ丘展望台、クラーク博士の「ボーイズビーアンビシャス」があまりにも有名だ。
 南区を過ぎ、通称「定山渓国道」を南下する。札幌の奥座敷、定山渓温泉を通過し、中山峠を越えて、羊蹄山の裾野に広がる留寿都高原を通り、洞爺湖に向かうルートである。
 峠にさしかかると、また霧が出てくる。海と峠と、きっと湖も霧ですっきりしないのだろう。これが北海道なのかもしれない。妙に納得して峠を越える。普段なら右手に羊蹄山が富士山のように見えているのだろうと思うと、残念である。見えるのは靄だけなのだから。
 定山渓国道に別れを告げ、中山国道に入る。この辺りは、高原の村、留寿都である。歌手の細川たかしの出身地、真狩村はここからすぐのところにある。羊蹄山は見えないのだが、細川の歌が聞こえてきそうな牧歌的な雰囲気を醸し出している。
 道は空いており、70km/hで巡航している。仲間のライダーが次から次へと対向車線を過ぎて行く。その度にピースサインを交わす。ピースサインとは、ライダーにとってのエチケットである。手を上げて挨拶を交わすもので、「気をつけていい旅を、グッドラック」
そんな意味が込められている。これはライダーにとっては、とても気持ちのいいものなのだ。