a50b287e.jpg転勤族の父のもと幼き頃、住まいを3度替えた。その一つに数十年ぶりに行ってみたことがある。
マンションタイプ2階建12戸の集合住宅である。
その敷地には、幼き頃の遊びのすべてを賄ったフィールド(広場)があった。

水を撒いて凍らせスケートもした。軟式テニスボールで草野球もした。バットは棒切れ、グラブは素手である。隣の家の屋根を越えたらホームラン。コマをぶつけて叩き割る喧嘩ゴマ、ビーダマにパッタ(メンコ)、地面にS字を描いて、相手の陣地まで、ケンケンで跳ねて敵を倒しながら敵陣の宝を奪うS外戦。等々、幼き遊び心は尽きることがない。皆が天才である。
小さい、あまりにも小さすぎる。今の大人の目では、何もできないと思えるほど小さなフィールドである。
同じフィールドで様々なドラマが演じられたとは到底思えず、驚き以外の何物でもない。
数十年の時の流れが物の見方を変えてしまった。

小さな心に
いっぱいに広がる
大きな夢の遊び場

こちらの塀から
あちらの塀まで
走り比べを楽しんだ

投げて打って
隣の家の
屋根を越えたら
ホームラン

砂場に輪を描いて
はっけよい
のこったと
横綱の張り合い

独楽をぶつけて
力を鼓舞した
喧嘩独楽

潰れたら負けと
歯を食いしばる
駈けて背に乗る
馬ごっこ

Sの字描いて
ケンケン歩きで
相手を倒し
宝を奪うS外戦

ビー玉をぶつけ合い
メンコをひっくり返す

すべてを賄った
小さな心に息づいている
大きな夢の遊び場

小さい
何もできないほどに
小さい

数十年ぶりに
思い出の遊び場に立ち
慄然とする

穢れた目には
失った純の数ほどに
大は小となり
幼い思い出が嘘のようだ

この空間を
再び夢の遊び場とすることが
できるだろうか

純な新鮮な心の目を
再び得ることが
できるだろうか

穢れた大人より
幼子でいたい