大学3年生、21歳になりたての頃に1ヶ月くらいかけて原稿用紙150枚の小説を書きました。
よくある青春もののありふれた内容です。
今、読むと本当に気恥ずかしいのですが、ここに書いて行こうと思います。
既に書き終えてから48年7ヶ月が経過しています。
稚拙な内容は時効ということでお許し願いたい!
昭和49年、1974年のことです。
<昭和40年代後半、1970年代の仙台駅>
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《愛の戯れ》
第一章 信じられない出来事
里見健介は或るレストランのカウンターで額に汗を光らせながら忙しく立ち働いていた。
「大三丁に中一丁〜」
そのレストランのマスターが右手と左手の指で三と一を示しながら威勢のいい声で客の注文を伝えてきた。
大、中とは生ビールの大ジョッキと中ジョッキのことである。
健介は二日前に東京近郊のI市から彼の郷里である東北のS市に帰省してきたばかりだった。
彼の在籍している大学の夏季休暇は二ヶ月間あり、その一ヶ月間をクラブの合宿費用と小遣いを捻出するためにバイトに充てたのである。
以前から申し込んでおいたこのレストランで昨日から働き始めたのだった。
バイトが順調に滑り出したにもかかわらず、健介の心は或るひとつの事を思い詰めて沈んでいた。
「あっ、はい〜」
およそ、このレストランとは無関係な物思いに耽っていたのだろう、健介は慌ててジョッキを揃えビールを継ぎ始めた。
健介の心は二日前に飛んでいた。
彼は帰省途中の列車の中にいた。あと十分もすれば待ちに待ったS市である。彼はソワソワし始めた。手元にあったタバコをポケットに仕舞い込み、また思い出したようにそれを取り出して火を付けた。そして深々と吸った。いくらか落ち着いたように思った。しかし、身体の底から湧き上がる笑みを隠すことはできなかった。
駅のホームには彼の恋人が待っている筈である。
彼は心を躍らせてホームに降り立った。しかし、見知らぬ人々の顔が映るばかりで、恋人の姿はどこにも見当たらなかった。
「仕事が長引いているのかな?」
彼はボストンバックを片手に出口に向かいながらボソボソと独り言を呟いた。いくら仕事のために間に合わなかったと判っていても淋しさは拭えそうもなかった。
<俺のためだもの、仕事なんかほっぽりだして来てくれてもよさそうなのに>
彼は改札口を出て、その直ぐ傍にあるコインロッカーにボストンバックを押し込んだ。
彼には楽しい夏のバケーションが約束されている筈だった。
彼は改札口を振り返って<はっ>とした。彼の目に即座に映ったものは一人の女だけだった。その他の物は総べて暗闇に包まれてしまっていた。ちょうど、暗闇の中でスポットライトがその女だけに当たったように。
彼が凝視している女は、フランス人形のような彼の恋人、梓理香だった。彼女の姿が彼の心臓を突き刺した。
「理香〜」
彼は辺りを気にせず思わず叫んで彼女のところに走り寄った。
「ああ〜、もうどこかへ行ってしまったのかと思っちゃったわ、遅れてごめんなさい、仕事が忙しかったの、これでも会社から走って来たのよ」
驚いたように円らな瞳を尚一層大きく見開いて品を作りながら理香が言った。
「いいんだよ、俺も今着いたばかりだから」
先の淋しさが嘘のように嬉しそうに微笑しながら健介が言った。
「何も持たずに来たの?荷物は」
ダークスーツに身を固めた手ぶらの健介を見て不思議そうに理香が言った。
「そこのコインロッカーに入れちゃったよ、茶店に入って落ち着こうや」
コインロッカーを指さしながら健介が言った。
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今夜はここまでにします。
毎日、原稿用紙数枚程度は書いていきます!
乞うご期待!
よくある青春もののありふれた内容です。
今、読むと本当に気恥ずかしいのですが、ここに書いて行こうと思います。
既に書き終えてから48年7ヶ月が経過しています。
稚拙な内容は時効ということでお許し願いたい!
昭和49年、1974年のことです。
<昭和40年代後半、1970年代の仙台駅>
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《愛の戯れ》
第一章 信じられない出来事
里見健介は或るレストランのカウンターで額に汗を光らせながら忙しく立ち働いていた。
「大三丁に中一丁〜」
そのレストランのマスターが右手と左手の指で三と一を示しながら威勢のいい声で客の注文を伝えてきた。
大、中とは生ビールの大ジョッキと中ジョッキのことである。
健介は二日前に東京近郊のI市から彼の郷里である東北のS市に帰省してきたばかりだった。
彼の在籍している大学の夏季休暇は二ヶ月間あり、その一ヶ月間をクラブの合宿費用と小遣いを捻出するためにバイトに充てたのである。
以前から申し込んでおいたこのレストランで昨日から働き始めたのだった。
バイトが順調に滑り出したにもかかわらず、健介の心は或るひとつの事を思い詰めて沈んでいた。
「あっ、はい〜」
およそ、このレストランとは無関係な物思いに耽っていたのだろう、健介は慌ててジョッキを揃えビールを継ぎ始めた。
健介の心は二日前に飛んでいた。
彼は帰省途中の列車の中にいた。あと十分もすれば待ちに待ったS市である。彼はソワソワし始めた。手元にあったタバコをポケットに仕舞い込み、また思い出したようにそれを取り出して火を付けた。そして深々と吸った。いくらか落ち着いたように思った。しかし、身体の底から湧き上がる笑みを隠すことはできなかった。
駅のホームには彼の恋人が待っている筈である。
彼は心を躍らせてホームに降り立った。しかし、見知らぬ人々の顔が映るばかりで、恋人の姿はどこにも見当たらなかった。
「仕事が長引いているのかな?」
彼はボストンバックを片手に出口に向かいながらボソボソと独り言を呟いた。いくら仕事のために間に合わなかったと判っていても淋しさは拭えそうもなかった。
<俺のためだもの、仕事なんかほっぽりだして来てくれてもよさそうなのに>
彼は改札口を出て、その直ぐ傍にあるコインロッカーにボストンバックを押し込んだ。
彼には楽しい夏のバケーションが約束されている筈だった。
彼は改札口を振り返って<はっ>とした。彼の目に即座に映ったものは一人の女だけだった。その他の物は総べて暗闇に包まれてしまっていた。ちょうど、暗闇の中でスポットライトがその女だけに当たったように。
彼が凝視している女は、フランス人形のような彼の恋人、梓理香だった。彼女の姿が彼の心臓を突き刺した。
「理香〜」
彼は辺りを気にせず思わず叫んで彼女のところに走り寄った。
「ああ〜、もうどこかへ行ってしまったのかと思っちゃったわ、遅れてごめんなさい、仕事が忙しかったの、これでも会社から走って来たのよ」
驚いたように円らな瞳を尚一層大きく見開いて品を作りながら理香が言った。
「いいんだよ、俺も今着いたばかりだから」
先の淋しさが嘘のように嬉しそうに微笑しながら健介が言った。
「何も持たずに来たの?荷物は」
ダークスーツに身を固めた手ぶらの健介を見て不思議そうに理香が言った。
「そこのコインロッカーに入れちゃったよ、茶店に入って落ち着こうや」
コインロッカーを指さしながら健介が言った。
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今夜はここまでにします。
毎日、原稿用紙数枚程度は書いていきます!
乞うご期待!