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まず憲法問題から話します。
憲法がレジティマシー(Legitimacy)を持たないことは明らかです。
レジティマシー(Legitimacy)というのは英語ですが3つ意味がありまして、一つ目は合法であるか非合法であるか、つまり合法性という意味、即ちリーガルであるかイリーガルであるかということ、二つ目が国家の政策として正統性があるかということ、要するに正統な考え方と異端という考え方、そういう意味で正統性があるかということ、そして三つ目にジャスティファイヤブル(justifiable)であるかと、ジャスティファイ出来るかということ、ジャスティファイというのは正当防衛の正当です。
要するに正当化出来るかどうかということ、そうするとレジティマシーという言葉には、合法性という意味と正統と異端という意味での正統性と、それから正当防衛という意味での正当性という三つの意味があります。

占領軍憲法もしくは日本国憲法が日本に押し付けられた過程を見ると最初からレジティマシーというものがまったく欠けているということが分かる訳です。
皆さんは既にご存じだと思いますから非常に短く言いますが、1946年の1月にGHQは公職追放を開始した訳です。
それまで日本の指導的立場にあった人の中でアメリカにとって都合の悪い人間は皆んな公職から追放した訳です。
その中には石橋湛山のように非常に立派な人間も含まれていたのですが、要するに石橋湛山という人はそれこそ満州事変のときから中国大陸の進出に反対しており、彼のように戦争に反対していた人間もアメリカにとっては目障りな存在は全部公職から追放してしまったのです。

1946年の1月に公職追放を開始して、日本の政治家、言論人、有力な官僚の全員を脅し付けた訳です。
日本人は占領軍(GHQ)にちょっとでも逆らうとパージされてしまうということを理解した訳です。

公職追放を始めて日本人を震え上がらせて、その翌月の2月に占領軍憲法をアメリカはたった8日間で書き上げて日本に押し付けてきた訳です。
その中には勿論憲法9条も入っている訳です。

32〜33年前のことなのですが、当時の講談社にビューズ(Views)という雑誌があって、そこから頼まれて、1946年の2月に占領軍憲法を起草したアメリカ陸軍の若手の士官と憲法を創ったリーダーシップを執っていたケーディス大佐という人物がいるのですが、ケーディスとその若手の陸軍士官にインタビューしたことがあります。
非常に面白かったのは、最初にインタビューした陸軍士官、彼はまだ20歳代の後半で、いきなり、ある日突然に日本の憲法を書けと言われてビックリしたと言っており、しかも彼は憲法のことなど勉強をしたこともなくまったく知らない訳です。
憲法の起草に参加したアメリカ人というのは25人いて、法学部で法律の教育を受けた人間は4人しかいなかったと言います。
あとの21人は法律に対して全くアマチュアであったということ、しかも憲法を創るはずなのに憲法学を専門的に勉強した人間は一人もいなかったということで、25人のアマチュア集団がたった7〜8日間で、この憲法をでっちあげた訳です。

当時20歳代の後半だった陸軍士官は、物凄くビックリしたし、しかも占領軍憲法の9条、これはいったい何だと、この9条があったら独立国になれない訳で、彼は何でこんなデタラメをやるんだと、要するに軍隊など最初から持ってはいけないとか、交戦権もないとか、そんなことでは隣の国から攻められたらもうやられっぱなしになる、こんなのはバカげていると彼は思ったのですが、その25人のリーダー格だったケーディス大佐が、絶対9条は押し付けなければならないと言うので、彼は渋々ながらその命令に従ったということです。
ケーディス大佐とはどんな奴だと聞いたら、この若手の陸軍士官は、凄く嫌な奴で、凄くうぬぼれていて嘘つきで、ユダヤ人で非常に狡い奴だということでした。
しかもアメリカ共産党の党員ではなかったらしいのですが、アメリカ共産党のフェロートラベラーとか呼ばれている人で、要するにアメリカ共産党の党員と非常に近い関係にあったと言われていて、共産主義のシンパのようなことを言っていたということですが、清廉潔白な左翼かというとそういう人物でもなかったということです。
とにかくうぬぼれていて、とても嫌な奴で、凄く嘘つきだったという人物でした。

このケーディス大佐が憲法9条を日本に押し付けて来た訳です。

この若い陸軍士官は、この憲法には賛成できなかったし、こんなバカげた憲法を日本人が受け入れる筈がないと、この憲法を創りながら思っていたと述べています。

アメリカが日本の占領を終了したら、日本人はその次の日に、こんなバカバカしい憲法を日本人が受け入れる筈がないから、この憲法を捨てると思っていたと彼は言っていました。

彼が僕に質問して来て、どうしてあんなバカな憲法を使っているのか?早く捨てればいいではないかと、あんな憲法は最初からインチキなんだと、占領軍が押し付けただけで何のレジティマシーもないと、彼は非常に不思議がっていました。

彼は凄く正直な人で凄く感じの良い人でした。

これは、講談社のビューズという月刊誌に、1980年代末か1990年代初め頃に載ったインタビュー記事です。
残念ながら、僕はその雑誌を手元に取っておかなかったので、どこかに消えてしまいましたが、その頃のビューズという月刊誌に載っている筈です。

その陸軍士官にインタビューした数日後に、ケーディスに電話インタビューしました。
ケーディスは当時、ニューヨークかボストンに住んでいましたが、講談社は直接行ってインタビューしてくれと頼んできたのですが、僕は物凄い怠け者なので面倒くさくて電話インタビューで済ませた訳です。
電話で40〜50分、ケーディス大佐に憲法を創った当時のことを聞いた訳ですが、非常に面白かったのはケーディスが、憲法9条は僕が創ったものではないと、あれは日本国民が憲法9条のような内容を望んだから我々が入れたのであって、僕の発案ではないと、僕が憲法9条を言い出したのではないと、100%の嘘を言ったのです。
それが嘘であるということは、ケーディスの前にインタビューした陸軍士官も、他の学者も皆んな知っていることなのです。
僕が電話で(憲法9条の経緯について)答えてくれますかという質問に、ケロッとして、ケーディスは、あんな憲法9条を提案した覚えはないと言ってのけます。
僕はあまりにも面白くて、笑ってしまったのですが、何故かというと、陸軍士官からケーディスは嘘つきで嫌な奴だと聞いていたので、その数日後にケーディスに電話したら、露骨に嘘をつくから、本当に嘘つきだと思った訳です。
とにかくそういう人間が、占領軍憲法を書いて日本に押し付けてきたということなのです。
1946年の5月〜10月まで、当時あった日本の帝国議会で、この憲法を討議して、採決したとなっていますが、これは全くの嘘で、何故かというと、当時はアメリカ占領軍(GHQ)に対して、真正面から批判するような人間は、皆んなパージされていた訳です。
言論の自由、表現の自由、討論の自由というのはなかったのです。
しかも当時の日本のマスコミというのは、全て100%アメリカ占領軍に検閲されていて、アメリカに対して批判的なことは一切出て来ない訳です。
言論の自由、表現の自由、討論の自由、というものがなくて、政治的な活動の自由も全部ないとこで、日本の帝国議会が形式的に占領軍憲法を採決したとしても、そんなものは最初から全く無意味な訳です。
そういう最初から無意味であり、無効であること、つまりレジティマシーというものが全くゼロであることが明らかな憲法を、未だに自民党政府は、ここを変えればいいとか、9条に第三項を加えればいいとか、そういう間抜けなことを言っている訳です。
これはもう自民党と日本の法務省、外務省が完全に腐っているから、こういう無効な憲法を如何にも合法であるかのように、いかにもレジティマシーがあるようなお芝居をして、ここだけ変えればいい、などど卑屈なことをやっている訳です。
これはもう自民党、法務省、外務省が、どれくらい無責任な連中であるかということの証明になると思います。

昔、1980年代と1990年代に日本の外務省で、活躍されていた村田良平さんという方がおられます。
その方が書かれた「村田良平 回想録 下巻:既に絶版、図書館にはあります」に第13章というものがあります。
この第13章というのは、50ページ程度の文章なのですが、ここに物凄いことが書いてあります。
村田良平さんというのは事務次官をやって、駐ドイツ大使をやって、駐米大使をやりました。
最も重要なポストです。
外務省のエリート中のエリートです。
外務省の中枢だった人物です。

その人物が回想録の下巻で、この占領軍憲法は最初から無効であるということをハッキリと書いておられる訳です。
彼が言うには、日本政府はこの占領軍が創った憲法の成立過程を国民に明確に伝えるべきである。
そして、現行憲法が無効であるという宣言を発するべきである。
彼が考えるに、現在の日本の抱える諸悪の半分は占領軍が創った憲法が根源となってる。

僕もこれには100%賛成です。
村田良平さんは憲法制定会議というのを作って、新しい憲法を最初から創り直すべきであるという考えなのですが、僕はちょっと村田さんと違っていまして、僕はイギリスのように不文憲法という文章化されていない憲法、イギリスの憲法がどうなっているかというと、歴史的に、12世紀、13世紀から積み上げられてきた国王と議会の約束とか、議会が作った法案、人権保護法とか、権利の法典とか、王位継承法とか、その時々の法律の積み重ね、それから裁判所が出した、そういった法律の解釈や判例、イギリスの不文憲法というのは、憲法章典とか文章に書かれたものがなくて、議会の作った法律と、イギリス王家と議会との約束、それから国民が実行して来た政治的な慣習、裁判所の判例、それらの積み重ねによって、大体こういう国柄であるということを、かなり漠然と認識したものであって、憲法第何条が何々だとか、そういうふうにきっちり決められている訳ではないのです。

皆さんはそういうものがいい加減だとお思いになるかもしれませんが、考えてみるとイギリスというのは、17世紀の中頃にクロムウエルが独裁政治をやって、かなり血なまぐさい争いをやった後は、過去370年間、殆ど血なまぐさい内乱とか内戦とか革命騒ぎとかがない訳です。
逆に憲法を持たないで、少しずつ積み重ねで、少しずつ変えて来た国の方が、政治的な動乱とかレジュームチェンジ体制転換を避けることが出来て、逆にヨーロッパ大陸や、アメリカは憲法を自分たちの敵に押し付けようとして、何度も血なまぐさい内乱とか内戦をやってきた訳です。
そうすると成文憲法を無理やり自分たちの政敵に押し付けるという行為が、きちんとした国家の安定的な発展にとって良いのかということを僕は凄く疑う訳です。

正直言って僕は、占領軍憲法が嫌いなだけではなくて、実は明治維新の後の大日本帝国憲法もあまり評価していません。
日本の保守派は、渡辺昇一さんのように戦前の憲法に戻せば良いという方がおられますが、僕はそれには反対で、むしろ不文憲法にした方がいいと、村田良平さんがおっしゃるように、現在の憲法は無効であるという宣言を日本政府と議会は出すべきですが、だからと言って、次の日から全く別の憲法を採用すればいいというようには思わない訳です。
何故かというと、僕は過去76年間、日本人に押し付けられてきた占領軍憲法を軽蔑している訳ですが、だからと言って、ある日突然、全部パーにするというのは良くないと、しかも占領軍憲法に書いてある8割か9割は、そのまま続けてもいいのではないかとも思っています。
全部いきなり変える必要はないと思っています。

今まで76年間使って来た憲法を明日から普通の法律と同様に扱って、今までの憲法も法律的に有効であったというようにすれば、今までの最高裁の判例もそのまま使えることになります。
これを76年間、憲法はインチキだったということで全部ひっくり返すと日本の法体系が無茶苦茶になってしまいます。
そういうことはやってほしくないと保守派の僕は思います。

保守派というのは、エドマンド・バークが言うように、少しずつ改良して行くというのが姿勢であって、それを一気に大規模に変えようというのは左翼か右翼のファシストの発想です。
今まで76年間使って来た憲法は、いったん法律レベルに格下げして、変えたいところは少しずつ変えて行けばいいと思います。
占領軍憲法は最初から無効であったと宣言して欲しいのですが、だからと言って、その内容を全てドラスティックに大規模に全部変えるということは逆に混乱を招くのでやって欲しくないのです。

占領軍憲法で一番問題なのは9条で、これは今年中にでもチャラにすべきです。
9条は何の役にも立たず、日本の国益に巨大なダメージを与えるだけなので、あっさり捨てることです。
破棄すれば良いのです。

日本は自主防衛権を持つ、真面な国であり、自衛隊は自主防衛の能力を持つとハッキリ憲法に明記すれば良いのです。

9条以外の天皇制に関する条項とか基本的人権に関する条項は、次の5年、10年、20年くらい、そのままにしていても害があるものではないと思っています。
これらを変えようとすると日本の左翼と右翼がヒステリー状態になりますから、僕はヒステリー状態というのが嫌いです。
そのようにはなって欲しくないのです。

自民党は1955年から自主憲法を創るというように言っていましたが、それを本気でやろうとしたのは、1955年、1956年に仕事をしていた鳩山一郎と重光葵と石橋湛山の三人だけで、この三人が消えた後は、自民党というのは、憲法改正とか自主憲法制定とか一度も本気ではなかったのです。
岸信介にしても佐藤栄作にしても福田赳夫にしても中曽根康弘にしても小泉純一郎、安倍晋三にしても、菅義偉、岸田文雄にしても、皆んな本気ではないのです。
自民党というのは、例えば吉田茂は、社会党が憲法改正に反対するのに酷く喜んで、陰でくっついていて、憲法改正が出来ないように、社会党と協力していたし、それから1994年に竹下昇がニューヨークタイムスのインタビューに応えて、社会党は9条を盾に日本の再軍備に反対してくれたのは、自民党にとって凄く都合がよかったと言っているのです。
それを竹下昇はジャパンズ カミング デポルマシー(Japan's Coming Deporumacy)、狡猾な狡い外交であると喜んでいる訳です。
自民党というのは本当に吉田茂や竹下昇だけではなくて、池田勇人も佐藤栄作も中曽根康弘も愛国者であるかのごときポーズを取って、自主憲法制定とか言ってきた訳ですが、最初の三人、鳩山、重光、石橋は別として、他の殆どの歴代総理は本気で憲法改正なり自主憲法制定などは考えていないのです。

自民党がこれほど長期政権を維持してきたのは、日本の野党がバカだから、要するに日本の野党が信じられないほどおバカさんで、凄く無責任な連中なので、日本の野党に比べれば、腐った自民党の方がまだ増しだ、というので我々国民は止むを得ず自民党を受け入れてきた訳です。
本質的に非常に無責任な政党であると思います。

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続きは後日に記載します!

占領軍憲法が如何に理不尽な憲法であるかがお判りいただけたと思います。
未来の子供たちのために、日本の国体が未来永劫続くように、この占領軍憲法は改正しなければなりません。

国民一人一人がこの占領軍憲法の意味をよくよく考えて、これからの日本の進むべき道を切り開かなければならないのです!

私のような老人はそう長くは生きられません。
今の日本に生きることは出来るでしょうが、少なくても20年を待たずに中国の属国になっているかもしれません。
強制的に中国語をしゃべらせられ、その属国となるのです。
耐えられますか?

そうならないために何をすべきか、よくよく考えて下さい!

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<参考サイト:チャンネル桜「伊藤貫の真剣な雑談」第8回「日本を滅ぼす巨大な嘘」(R4/8/6)>