BOYH (640x315)


「少年H」を観ました!
1930年、昭和5年生まれの洋服仕立屋の息子、妹尾肇の物語です。
映画は昭和16年から始まります。

教会に通うクリスチャン一家で、父の洋服仕立屋という職業柄、外国人の客が多く、母は当時としてはハイカラなローマ字を縫い込んだセーターを肇に着せていた。
その1着、胸にHが縫い込まれたセーターを常に着るようになる。
それが「ショウネン エッチ」の所以である。

アメリカ人の客もおり、肇はエンパイアステートビルの絵葉書を受け取ったりして、アメリカの国力の凄さを身に沁みて知っていた。
やがて昭和16年12月8日を迎える。米英との開戦の日である。

客としての外国人との接触が、スパイとみなされ、父は官憲の厳しい取り締まりを受け傷つくが、潔白を言い続け無事に帰された。
肇は学校で、クリスチャンで攻められ、エンパイヤステートビルの絵ハガキで攻められ、辛い日々を送るが、大本営発表の嘘を見抜き、多数の日本兵が戦死していることを知っていた。

神戸は空襲で焼け野原となるが、幸運にも家族はすべて助かった。
やがて昭和20年の終戦を迎える。

疎開先から妹が土産の米を持って帰って来た。
戦災復興住宅というバラックに住む家族の久しぶりの白米おにぎりでの団欒が始まったが、隣の住人の子供がバラックの隙間から白米おにぎりを見て、食べたいと駄々を捏ねる声が聞こえて来る。
敬虔なクリスチャンの母は、自分たち家族だけが良い思いをすることを嫌い、残り少ない白米を分けてやるのだった。
肇には、この大変な食糧難の時に、どうして他人を助けるのか理解できなかった。
そんなことをしていては限がないではないかと!
母の自己犠牲の精神は一貫していた。

それに疑問を感じ、父にこれで良いのかと詰め寄る肇だったが、昔のように明快な応えは得られず、父が言葉を発することはなかった。

戦争時代に、クリスチャンや外国人との接触を激しく罵り暴力を奮われた中学の教官は、今は共産主義に没頭していた。
別の教官は、露店でアメリカ人相手に家業の時計屋を営んでいた。

これでいいのかと、15歳になった肇は青春の炎を滾らせるが!

簡単に要約すると、こんな粗筋です。
家族の絆や友情の素晴らしさを、戦争の愚かさを通じて際立たせた秀作です。
当時の世相を忠実に再現しながら、戦争を知らない若い世代に警鐘を鳴らしているようにも思います。

私の生まれる12年前から7年前くらいまでを描いています。
当時の世相は、様々な映画で描かれているものと大差はありませんが、子供の視点で当時を捉えた貴重な自伝とも言えるでしょう。

原作には時代背景に多くの誤りがあると物議を醸しました。
原作者の妹尾河童は、指摘を受け、原作を手直ししたようです。
降旗康男監督も手直し前の原作と手直し後の原作の両方を参考にして、一般的な認識の時代背景を取り入れたようです。

良い映画を観た、という気分にさせてくれる映画でした!