img014

森村誠一氏の小説に「非道人別帳」というのがあります。前書きの説明書を転記すると、
「町奉行所に保管されている刑事関係諸帳簿、たとえば検使罪過之者留帳、同心検使罪過之者留帳、三十日切尋日切過候伺帳、諸訴刻限留帳、御用覚帳、捕者帳、町廻帳等の中に、非道人別帳という帳簿があった。これは奉行所が取り扱った江戸の犯罪の中で特に凶悪であり、あるいはその所業人道を踏み外す不届き至極な者どもの犯罪事実を記録した帳簿である。
この作品は江戸町奉行所に保管されていた非道人別帳に基づいている。」となっています。
文庫本で1巻〜8巻の中に様々な江戸で起こった凶悪事件を脚色して描いた小説です。
江戸時代であろうが現代であろうが、人間が起こす犯罪に大差がないことが、この小説を読むことでよく解ります。
古今東西、大多数の人々は家族や友人など身の回りの人々と助け合いながら精一杯真面目に生きています。
一握りの悪人がどうしようもない性を顕にし人を殺め、そ知らぬ顔を決め込みます。
その絵解きをして、犯罪を白日の下に晒していく町方同心「祖式弦一郎」の洞察は痛快で面白い。
読みがいのある江戸の犯罪物語です。