167e2e3d.gif50歳を過ぎるとシングルからローティーンの頃を思い出すことが多くなった。
この季節、氷屋が氷をトラックに積んで売りに来たものだ。電気冷蔵庫などまだない時代。氷で冷やす小さな小さな冷蔵庫だった。今の単身用の冷蔵庫の高さが半分くらいのものだ。そこに氷一貫目を入れて冷やすのだ。暑い日は半日も持たずに溶けてしまう。今度は氷屋まで買いに行く。そんな風情だった。ところてん屋が軽やかに「ところてん、ところてん」と声を出しながら自転車で売りに来る。器用に木製の隙目のある型にところてんを押し込んで先が平たい矛上のもので押し扱くのだ。つるつるつるっと差し出した受けのどんぶりにところてんが流れる。家に持ち帰る間にちゅるちゅるちゅるっと吸い込む、旨い。
いずれもここそこにあった珍しくもない夏の風情である。
今はそんな風情は皆無となった。氷は電気冷蔵庫に、ところてんは近くのスーパーに取って代わられた。それが悪いということではないのだが、一抹の寂しさを感じてしまう。
窓を開け放した縁側で内輪を片手に暑さをやり過ごしたりしたものだが、今は近所の手前そんなこともなくなった。
ビル風の熱風からは風情など感じるはずもなく、都会の喧騒がゆったりとした日本の情緒を消し去った。
昔に郷愁を感じセンチメンタルになること自体、もはや旧型人間の証である。

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