b6d21d26.jpg久し振りに県図書館の森で蝉時雨を浴びた。久し振りと思えるほどに今年の夏は可笑しい。
30度近くになったかと思うと20度まで下がって長袖が欲しくなる。8月に入って霖雨が多い。蝉もゆく夏を惜しむかのように鳴くというよりは、夏晴れの少なさに慌てて、この日とばかりに自分の存在を精一杯アピールしているようにも思える。ジージーとアブラゼミ、ミーンミンミンミンとミンミンゼミ、ツクツクオーシとツクツクボウシ、カナカナカナカナとヒグラシ、4種の音色が図書館の左右の森から降って来る。喧しさよりは心地よさ感じているゆく夏を惜しむ自分がいることに苦笑した。
森から駐車場の路面に目を転じて懐かしいものを見つけた。ウマオイ(馬追虫:別名スーイッチョン)がよたよたとアスファルトを動いている。子供の頃、リズミカルな美しいとさえ感じる音色スーイッチョンを頼りに、懐中電灯を持って丈の長い草をかき分けてウマオイ採りをしたものである。秋の虫では最も印象に残る音色ではないだろうか。そのウマオイがどういうわけか、昼間に駐車場のアスファルトから脱出できないでいる。活動は夜のはずなのだが。このままでは車に轢かれて潰されるのが落ちである。図書館には借りた書籍を返しに来たが、その書籍が入っていた図書館の袋から書籍を取り出し空にして、その中に手早くウマオイを誘導して収めた。急いで北側の森まで掛けて行き袋を逆さにしてウマオイを森に帰した。他愛無いことだが、何か良いことをしたように感じて心がウキウキとなった。単純この上ない。